「ユナ、何か俺に言うことない?」

登校早々、まためんどくさいのが始まったなと直感的に思った。

「ないけど、なに?」

幼馴染のキム・ジヌは制服の胸ポケットから自身のスマートフォンを取り出し、元々用意でもしてたかのようなスマートさでずずいと画面を見せつけてきた。

「これ、どういうこと?」

「どういうこともなにも…」

見せつけられたのは、私が昨日インスタにアップしたストーリー。弟と一緒行ったカフェの写真だけど、こちらからするとそれが何?という感じではある。

状況がよく分かっていない私とは裏腹に彼は、はぁー。と聞こえよがしなため息を吐いた。

「ユナ、なんでヨンヒョンとこのカフェ行ってるの。」

なんでと言われましても…

弟であるヨンヒョンと帰り道にカフェに寄ったらいけないと言うのか。

「え、普通に行きたかったから寄っただけなんだけど。」

それ以上に説明することがない。

「そうじゃなくて!」

自身の机を拳で叩いたかと思うと、何かを訴えかけるかのようにこちらに顔を近づける。

「なんで俺と行かずにヨンヒョンと行ったのかって聞いてるの!」

なんだそのめんどくさい彼女みたいなムーブは。

「別にジヌと約束してないじゃん。」

「はぁ、なんにも分かってないね。」

どうやら呆れモードに入ってしまったらしい。
これって私が悪いの?

「先週帰り、ユナが俺にここ行きたいんだよねって言ったじゃん!」

たしかに言った。ただ行きたいんだよねーって思ったから呟いただけなのだが…

「俺もいいね!って言ったじゃん、そこで!」

それは一緒に行こうってことじゃん!違う?!

というのが彼の主張らしい。

それはジヌの過剰妄想でしょ、と喉まで出かかったが、さすがに可哀想かと思い自分の中に留めることにした。

「ごめんねジヌ、カフェは今度行こう。」

「今日の部活の後。」

「OK。」

どうせ同じダンス部だし、どうせ家近いから一緒に帰るし、付き合ってあげよう。

ジヌはというと鼻歌なんて歌っちゃって、さっきまでイライラしていた人とは思えない。

「ジヌってさ、」

「うん?」

「めんどくさい彼女みたいだよね。」

「はぁー?」

まぁそんな素直なところが魅力でもあるんだけど。

「せめて彼氏って言え!」

言ったら調子に乗りそうだから、これも自分の中に留めておくことにした。