「『月明かりの60分』」
「……完璧だね」
律さんが頬をゆるめた。
「あの60分間が、全てを変えたから。この作品は、私一人じゃなくて……律さんと一緒に作りたい」
「え?」
「前に、約束したでしょ? いつか、律さんが文章を書いて、私が絵を描くって。私たちの物語だから、二人で一緒に……どうかな?」
律さんの目が輝いた。
「彩葉……ありがとう」
律さんの声が少し震えていた。
「それじゃあ、これが俺たちの最初の共作だね」
私たちは、もう一度月を見上げた。
運命を変えた60分間──美術館に閉じ込められた、あの特別な夜。
橘マリの絵に導かれて、葛城律という人に出会って。私の人生は、大きく変わった。
夢を諦めずに、もう一度挑戦する勇気をもらった。恋をする喜びも知った。そして今、私は歩いている。律さんと手を繋いで、月明かりに導かれて。
新しい物語を紡いでいく。
書店のウィンドウには、『星降る森のおくりもの』と『月の見える窓』が並んでいる。時を超えて、作家たちの夢が繋がっている。
「さあ、帰ろうか」
律さんが手を差し出す。
「うん」
私たちは立ち上がり、手を繋いで歩き始めた。月明かりの下、二人の影が一つになって、道を歩いていく。
何事も、遅すぎることなんてない。夢は諦めなければ叶うんだ。
私たちの物語は、まだ始まったばかり。
これから先も、新しいページは続いていく。
ずっと、ずっと──。
月が、静かに私たちを照らしていた。
【完】



