「これからも、ずっと隣にいてくれる?」
「もちろん、ずっと一緒です」
私が迷わず答えると、葛城さん……律さんが、安心したように微笑む。
「仕事のパートナーとして、そして……俺の恋人として」
「はい」
私は力強く頷いた。
しばらく手を繋いだまま、私たちは未来への期待を胸に見つめ合った。
「おやすみ、彩葉」
「おやすみなさい、律さん」
お互い、名前で呼び合う。ただそれだけで、胸が熱く満たされた。
私は、改札に向かって歩き始める。
今までなら、必ず振り返って彼と手を振り合っていたけれど。
もう、あのもどかしい「お別れ」じゃない。私たちは、恋人として「また会える」のだ。
だから私は、背中に彼の視線を感じながらも振り返らずに歩いた。
ただ、前だけを見て。未来へと向かって。
◇
帰りの電車の中で、私はスマホを取り出した。真帆にメールを打つ。
【真帆へ
出版、決まったよ!
それと……私から告白した。
彼も、同じ気持ちだった。
無事、付き合うことになりました!
彩葉】
すぐに返信が来た。
【彩葉へ
おめでとう!!
すごいじゃん!
それと、良かったね。 本当に良かった。
明日、詳しく話聞かせてね。
真帆】
私は、思わず笑みがこぼれた。
電車の窓に映る自分は、笑っている。幸せそうに、顔をほころばせている。
視線を上にやると、夜空に月が輝いていた。
『月は、いつも変わらずそこにある』
ふと、橘マリの言葉を思い出した。
4年間、諦めていた夢。そして、新しく見つけた恋。全てが動き始めている。
「ありがとう」
橘マリさんへ。律さんへ。そして、諦めなかった自分へ。
運命の出会いから、4ヶ月。私の人生は、大きく変わった。



