やっぱり、断られるかな……そう思った次の瞬間。
「俺も……です」
葛城さんが掠れた声で言った。
「え?」
「俺も、柊さんのことが好きです」
葛城さんの目が、潤んでいる。
「実は今日、俺も同じことを言おうと思ってたんです」
うそ……。私は口元を手で覆う。
「柊さんと一緒にいると、心が温かくなる。一緒に作品を作っている時間が、幸せだった」
葛城さんが真っ直ぐ私を見つめる。
「俺からも、改めて言わせてください」
彼は深呼吸した。
「柊さん、好きです。これからは俺の彼女として、ずっと一緒にいてください」
涙が止まらなかった。
「はい!」
私たちは手を伸ばし、テーブルの上で手を重ねた。今度は、恋人として。
「これから、よろしくお願いします」
葛城さんがにこやかに言った。
「編集者として、そして……恋人として」
私は涙を拭いながら、微笑む。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
窓の外、街のライトがきらきらと輝いている。まるで、私たちを祝福するように。
レストランを出ると、春の夜風が頬をかすめた。
私たちは、並んで夜道を歩く。恋人として、初めて歩く道。
「手、繋いでもいいですか?」
葛城さんが恥ずかしそうに尋ねた。
「はい」
私たちは手を繋いだ。温かくて、安心する。
「柊さん……いや、彩葉」
初めて名前を呼ばれ、ドキリとする。



