月明かりの下で、あなたに恋をした


「……会議までの1ヶ月、柊さんは休んでください」
「え?」

胸に冷たい水が落ちた。

「この3ヶ月間、本当に頑張りました。仕事と両立しながら、よくここまで」

葛城さんの声が柔らかい。

「だから、しばらくはゆっくりしてください。会議の結果が出たら、またすぐに連絡します」

1ヶ月、葛城さんに会えないんだ。そう思うと、胸がぎゅっと締め付けられる。

それは休息のためじゃない。葛城さんが、一人で戦うための時間。

「葛城さん」

私は思わず声をあげた。

「あの、私も何か手伝えませんか」
「いえ、大丈夫です」

葛城さんは、首を横に振った。

「プレゼン資料は俺が作ります。柊さんは、良い結果を待っていてください」

葛城さんは立ち上がった。

「じゃあ、また会議後に」

私も力なく立ち上がる。ただ、結果を待つしかできないんだ……。



カフェを出ると、冷たい風が吹いていた。あまりの寒さに、体を震わせながら歩く。

あっという間に、駅前の広場に着いた。

「それでは柊さん、お体に気をつけて」

葛城さんが手を振ろうとする。私は、彼の姿をじっと見つめた。

言わなきゃ。今言わないと、もう二度と言えなくなるかもしれない。