私が聞き返すと、彼は少し考えてから言った。
「来年も、こうして会えますか」
「……はい」
答えた瞬間、葛城さんが私の手を強く握った。
「柊さん」
名前を呼ぶ声がいつもと違う。顔を上げると、彼の視線が私を捉えていた。
距離が近い。私たち、もしかしてこのまま……。
頭をよぎった考えに、心臓が跳ねる。
葛城さんは、ゆっくりと手を離した。名残惜しい温もりが、手のひらに残る。
「すみません。つい……」
「いえ。大丈夫、です」
私の声は震えていた。
窓の外では、雪が静かに降り続けている。もう少しで、何かが変わりそうだった。
私たちは、しばらく無言で雪を眺めていた。この時間がずっと続けばいいのに。
◇
カフェを出ると、雪は止んでいた。地面には、うっすらと雪が積もっている。
「送りましょうか?」
葛城さんが尋ねた。
「いいんですか?」
「もちろん。駅まで一緒に行きましょう」
私たちは、並んで雪道を歩く。誰も踏んでいない雪の上に、二人の足跡だけが並んでついていく。
あっという間に、駅前の広場に着いた。クリスマスのイルミネーションが、白とゴールドに輝いている。
「柊さん」
葛城さんが立ち止まった。
「はい?」
彼が私のほうを向く。その表情がいつもより真剣だ。



