月明かりの下で、あなたに恋をした


私が聞き返すと、彼は少し考えてから言った。

「来年も、こうして会えますか」
「……はい」

答えた瞬間、葛城さんが私の手を強く握った。

「柊さん」

名前を呼ぶ声がいつもと違う。顔を上げると、彼の視線が私を捉えていた。

距離が近い。私たち、もしかしてこのまま……。

頭をよぎった考えに、心臓が跳ねる。

葛城さんは、ゆっくりと手を離した。名残惜しい温もりが、手のひらに残る。

「すみません。つい……」
「いえ。大丈夫、です」

私の声は震えていた。

窓の外では、雪が静かに降り続けている。もう少しで、何かが変わりそうだった。

私たちは、しばらく無言で雪を眺めていた。この時間がずっと続けばいいのに。



カフェを出ると、雪は止んでいた。地面には、うっすらと雪が積もっている。

「送りましょうか?」

葛城さんが尋ねた。

「いいんですか?」
「もちろん。駅まで一緒に行きましょう」

私たちは、並んで雪道を歩く。誰も踏んでいない雪の上に、二人の足跡だけが並んでついていく。

あっという間に、駅前の広場に着いた。クリスマスのイルミネーションが、白とゴールドに輝いている。

「柊さん」

葛城さんが立ち止まった。

「はい?」

彼が私のほうを向く。その表情がいつもより真剣だ。