2週間後。12月24日、クリスマスイブ。
私と葛城さんは、いつものカフェで打ち合わせをしていた。
窓の外は初雪がちらついている。小さな雪の結晶が窓ガラスにくっついては、儚く消えていく。
「今日で、大きな山場は越えましたね」
葛城さんが、嬉しそうに微笑んだ。その安堵した表情に、私も自然と力が抜ける。
「ええ。あとは細かい調整だけです」
私も微笑み返す。
「1月中には完成できそうです。そうしたら、2月に社内の企画会議で提案します」
「通るでしょうか……」
私は不安げに呟いた。せっかくここまで二人で作り上げたのに、日の目を見なかったらと思うと胸が痛い。
「正直、わかりません」
表情を曇らせる彼に、私は息を呑んだ。
「上司に一度、企画の方向性を相談したんですが、『地味すぎる』『売れるか不安』って言われました」
「やっぱり……」
落胆した私に、葛城さんが慌てて付け加えた。
「それでも、俺は諦めません。完成品を見せれば、必ず価値が分かってもらえる。それに、ダメでも別の方法を考えます」
「別の方法?」
「他の出版社に持ち込むとか。方法は、いくらでもあります」
彼の目に、揺るぎない強い意志が宿っていた。
「葛城さん、どうしてそこまで?」
私は思わず尋ねた。



