「これです!」
葛城さんが声を上げた。
「これなら、物語が流れる。読者の目線が、自然と次のページに向かう」
私も画面を見て、納得した。
「本当ですね。良かった……」
疲れたけれど、達成感があった。やっと、壁を乗り越えたんだ。
「柊さん、よく頑張りましたね」
その声に、私は涙が溢れそうになった。
「葛城さんがいなかったら、私、今頃きっと諦めていました」
「いえ、柊さんが懸命にやりきったからです」
葛城さんが、ふわりと微笑む。その笑顔を見て、胸が締め付けられた。
好きだ。やっぱり私は、葛城さんのことが好き。
だけど、今は言えない。作品が完成するまでは、絶対に──。
◇
12月に入ってから、3週間。ある日、会社で思わぬトラブルが起こった。
リブランディングのクライアントから、急な追加依頼。しかも締切は、今週末。
「柊、頼むぞ。お前しか任せられないんだ」
戸田課長の言葉に、私は頷く。
「わかりました」
返事をしたものの、その週末は葛城さんとの打ち合わせがある。もしかしたら、待ち合わせに行けないかもしれない。
悩んだ末、私は葛城さんにメールを送った。
【葛城さんへ
申し訳ありません。
急な仕事が入ってしまい、
今週末の打ち合わせ、
時間を遅らせていただけないでしょうか?
午後5時以降なら、いけると思いますので。
柊】
彼から、すぐに返信が来た。



