「はい?」
「もし良かったら……このあと、少しだけお時間ありますか?」
私は目を見開く。
「はい、大丈夫ですが」
「実は、近くに美味しいカフェがあって。俺の秘密の場所なんです」
彼の申し出に、私の心臓が跳ねた。
秘密の場所。その言葉に、わくわくしてしまう。
「それに……作品のこと以外にも、色々と話したくて。柊さんのこと、もっと知りたいんです」
照れたように言う葛城さん。そんな彼に、私の胸はきゅんと鳴った。
嬉しい。もしかして、私に興味を持ってくれているのかな? 作品だけじゃなく、私自身にも。
「……はい。ぜひ、ご一緒させてください」
葛城さんが、嬉しそうに微笑んだ。
「じゃあ、こちらです」
◇
葛城さんが連れて行ってくれたのは、駅から少し歩いた路地裏にある、小さなカフェだった。アンティーク調の内装に、温かみのある照明。
「ここ、仕事で落ち込んだ時に来るんです。今日、柊さんを連れてきたのは……ここを、共有したいと思ったからです」
その言葉に、胸が熱くなった。彼の大切な場所を、私に教えてくれたんだ。



