長く感じられる入学式が終わり、各々の教室に戻る生徒達。私達も4人で教室に戻った。すると後から来ていた先生が教壇に立って自己紹介を始めた。

「今日から担任になる橘 恭也です。新任だけど、よろしくな」

そう言って爽やかに笑う橘先生。やっぱり女子生徒達は見惚れているようで、男子生徒達はつまらなそうにしている。

「それじゃあ皆にも自己紹介してもらおうかな。まずは──」

窓際の1番前の生徒が立って自己紹介を始める。程なくして翔真の番になった。私は少しだけ翔真の自己紹介が気になっていた。

すると、とんでもない言葉を発した翔真に私は思わず左側に顔を向けてしまった。

「倉持 翔真です。隣にいる春原 茉夕は僕の大事な人なので傷つけないでくださいね」
「ちょっ……翔真……!?」

こちらもにっこり笑って言い切って着席する。勿論教室中はざわめきに包まれた。

なんでっ……余計な事言ったの!?翔真は何を考えているの!?

私にはその意図が汲めず、頭を抱えた。次は雄真だ。きっと彼なら余計な言は言わないはず。しかし、私の期待は裏切られてしまった。

「倉持 雄真。翔真とは双子。茉夕とは幼なじみ。以上」
「雄真まで……」

何故。何故2人は余計な事を言ってしまったのか。中学生の頃はこんな事無かったのに……!

未だに教室内はざわめいている。そりゃそうだ。かっこいい男子が1人の女子の名前を出して自己紹介したのだから。私は2人をかっこいいなとは思った事はあまり無いけれど、確かにかっこいいと思う時もある。けど、それとこれとは話が別だ。

そして私の番になり、とりあえず先程の事を訂正する事にした。

「春原 茉夕です。倉持兄弟とは何もありませんので仲良くしてください!」
「えー、僕悲しいんだけど?」
「翔真は黙ってて……!」

否定してもすかさず翔真が口を出してくる。私に何か恨みでもあるのかと疑いたくなってしまうが、さすがにそれは無いだろう。だとしたら何故二人揃ってあんな事をしたんだろう?

今までの自分の言動を省みたけども心当たりは全く無かった。

「来栖 南海です!茉夕とは大親友なので覚えておいてください!」
「南海まで……何なの……?」

まさかの南海まで私との関係を大っぴらにした。彼女の声ではっとして周りを見回して見ると、結構な人数が私と倉持兄弟をチラチラ見ている事に気がついた。

「お前ら落ち着け?4人はただの幼なじみだと思うぞ?」
「先生……!」

まさかの先生からの助け舟にほっとしたのも束の間。またしても翔真が口を開いた。

「先生、僕と茉夕はただの幼なじみじゃありませんよ?」
「翔真……!お願いだからもう黙って……!」

私の抗議も虚しく、翔真と先生の間で何故だかバチバチと火花が飛び散っているようにも思えた。

これからの学校生活、不安しかないよ……。