赤阪のヒーロー本部に着くと、生徒達は感嘆する。
伝説のヒーロー、初代「レンジャー5」のレッドの像の向こうには、白くて近未来的な建物が建っていた。
いかにもヒーロー達の拠点といった様相だ。
ブラックホール団の重厚な基地もいいが、こちらの造形も光サイドらしくて様になっている。

「リリア、これ仕事だから……くれぐれも浮かれないようにね。」

口元を隠しながらナギが言う。

「ナギだってにやけてるじゃない……」

内部に入ると、何人かのヒーローが休憩しているのが目に入る。

「ねえあれ……トゥインクルスターの天の川るりじゃない!? 」

「そっか、魔法少女もヒーローだもんねー。」

全く知らないヒーローばかりだが、この香り立つ正義の匂いは格別だ。

「あっちにコズミック5のメンバーがいるので、会いに行きましょうか。」

レッドが言うと私達の目は輝く。
コズミック5のメンバーに会える……!

浮かれる気持ちを押し殺し、レッドが案内する場所まで向かうと、
青いスーツを着た男が訓練場でトレーニングをしていた。

あれって……!ナギを助けたっていう……!?

「ブルーさーん!連れてきたよ!」

レッドが彼に手を振りながら言う。
ブルーはそれに気付くと固い動きでトレーニングを辞め、こちらに走り寄ってきた。

「や、やあ! 双星ヒーロー養成学校諸君! 
私はコズミックブルー! 正義のヒーローだっ! 」

ブルーはそう言って完璧なフォームで決めポーズを披露するも、全員反応に困り場は静まり返る。

「お前ら何黙りこくってんだ!
ブルーさんがポーズしてくれてんだから拍手だ拍手! 」

ナギが物凄い気迫で言い放つと、全員が拍手した。

「焔くーん、おじさんもしかして滑った……? 」

「自然体の方がブルーさんは好かれると思うぜ。」

「そう……せっかくヒーロースーツまで着たのに。
こほん! あー……初めまして、生徒諸君、俺はコズミックブルー! 
焔君と今んとこ一番の仲良し! 趣味は酒! あと食べること! よろしく!」

ブルーはそう言うと、全員と握手を交わす。
ブルーの握手は力強く、生徒達は目を輝かせ、ナギは涙目で呆けていた。

「ここは訓練場で……まあ多分似たようなとこが双星にもあるだろ?
ここではヒーロー達が訓練を行ってる。俺は連絡貰ったからヒーロースーツにヘルメットもしたが、普段ここにいるヒーロー達はすっぴんにトレーニングウェアだから、ヒーローになった際は気軽に入らず必ず申請してから入るようにな! 」

「「はーい」」

すっぴんのヒーロー達か……確かに見たいようで見たくないな。

「今日は一通り許可を取ってるので、奥にある事務ブース以外は好きに見ていいよ、誰ですかって聞かれたら入り口で貰った見学証を見せること!
ブルーも一緒に見て回ってくれるらしいから、彼に付いて行きたい子はブルーに改めてご挨拶してね。
1時間後またここに戻ってきて、じゃあ解散。」

私が隣にいるナギを見ると、彼はソワソワした様子でブルーを見ている。

「行ってきたら? 現役ヒーローと接触できる機会なんてそうないわよ。」

「えっ……でも……」

「いいじゃない、私に毎度くっついてることないのよ? 
……わ、私が迷惑かけてるせいでもあるんだけど……
今日くらい別行動でいいわ、私は自由に周るからあなたはブルーと一緒にいなさい。」

「リリア……! ありがとう! 俺、行ってくる! 」

ナギはそう言ってブルーの元へと駆け寄っていった。

良くないけど、仕事を忘れて楽しんでるのはやっぱりお互い様ね……。
ナギの代わりに私がしっかりと観察しておかなければ。

「リリア様! 俺も一緒に周ります! 」

「俺も行く……こいつもいるのは嫌だけど どうせ付いてくんだろ」

フユキとゆかりが顔を見合わせる。

「はい! 嫌がられてもこっそり付いていくと思います! 」

「……リリア、君も結構大変だな」

「あー……はは」

……

私達は施設をまんべんなく回る。
どれもウリュウの信用を回復できるいい資料なのだが、撮影禁止なのが残念だ。

「おい! お前今ぶつかったろ! 」

記念資料室で見学をしていると、廊下の方から怒声が響く。
3人で顔を見合わせ声の方にこっそり寄る。
すると背の高いヒーローが双星の男子生徒達を威圧しており、隣には気だるげな様子でスマートフォンをいじる少女が立っていた。