「ねえ?大丈夫?!」
開始早々、
俺の両手はしっかりとハンドルを握り締め、
雨も降っていないのに、
ワイパーが視界を邪魔しているから、
花恋がソワソワしだした。
よくこんなにも背もたれを90℃にして、
前屈みになれますね。
それにブレーキの位置も入念に確認して。
踏み間違いは怖いんです。
あれだけ運転したいと志願した癖に、
後続車が長い列になって渋滞していることは、
ここだけの話しにしといておくれ。
これでもスピード出してるつもりなんだけどね。
原付スクーターにあっさり躱され、
無様な姿を曝け出しちゃってるから、
俺は勇気を振り絞り、
力一杯、アクセルを踏み込んだ。
スピード出しすぎ、
と言われたって俺は気にしない。
こっから俺の運転テクニックを見せつけて、
挽回してやるんだ。
そう意気込み、
窓を全開に開け、
せもたれも倒して、
片手運転でスカしちゃってる。
ドライブデートっていうのは男が主導権を握らないといけないもんだろ。
モテる男の運転は丁寧というけれど、
今の俺にそんなものなんて感じられず、
安心感や気遣い、
余裕すら感じ取れない。
ブレーキの踏み方、
会話のトーン、
ミラーを見るタイミング、
車線を変える判断スピード全部がマイナス点。
こんなんじゃ、
花恋の体と心を守る運転とは言えず、
自分がどう思われたいかの自分本位の運転にすぎない。
急な加減速や荒いハンドル操作で、
花恋の身体が大きく揺れ、
強いストレスと不安を感じさせてしまっている。
まるでカージャックだと思われてもおかしくないほど、
ドライブデートとは程遠く、
犯人と人質の絵面になっている。



