「ヤギちゃんって言うの?私も苗字、八木《やぎ》って言うの。おんなじだね」
「俺は知ってたよ!一度、話してみたいなって前から思ってたんだよね」
「え!?嘘!ホントに?!」
「ホント、ホント!こんな感じで話せるなんてついてるわ!良かったら仲良くしようよ」
うん?
麻那の苗字が八木だと……?
八木ちゃん?
……だっちんの好きな相手はヤギちゃん。
あれ?
まさか……だっちんの好きな相手ってもしかして八木ちゃん?
あれ?
だとしたら可愛くてモテてるっていう辻褄が合うぞ。
ヤギちゃんなわけないんだし、
トイレで聞いた話は八木ちゃんのことを言ってたのか。
どうやら俺は、
だっちんの好きな相手を勘違いしていたっぽい。
ヤギちゃんと麻那の容姿を見比べるようにマジマジと見ていたら、
花恋が痛い目で見るように、
こちらを見ていた。
また変な目で女の子を見ているのだと、
きっと勘違いしているのだろう。
俺は花恋に「ごめん、だっちんの好きな子、
勘違いしてたっぽい。
本当に好きな子は麻那だと思う」と朗報を知らせてあげた。
それ、ホント?って、
顔にでも書いてあるのが分かるぐらい、
誰が見ても分かる表情を浮かべた花恋を見て、
俺は笑みを浮かべる。
お互い両手でタッチして喜び合うが、あまり触りすぎたら、
また強烈な張り手が飛んできそう。
だから、
俺は上手い具合にそっと手を恐る恐るしまい込んだ。
これは両思いだから付き合うのも時間の問題だな。
連絡先まで交換し合ってるし、
俺が手助けする必要なんて全く必要なさそうだ。
それじゃあ、
俺はお邪魔にならないようにと、
空気を読んで、
この場からお暇《いとま》させてもらうことにしよう。
俺はボスキャラを倒して手柄はやるよ、
っていう一匹狼で、
キザな役柄を無理に演じようとしている。
お前たちが幸せなら俺だって幸せさ、
と中二病みたいなマインドで振る舞う俺の背中は、
何処となく寂しさを物語っていた。



