一瞬の出来事に皆んなが目を開けると、
そこには床に吹き飛ばされた俺が、
お腹を押さえて蹲《うずくま》っている。
花恋たちを庇い、
まともに喰らってしまい、
ただいま悶絶中。
ここは『俺の腹筋、鋼だから』と言って、
皆んなを安心させたいところだけど、そんな余裕すらなさそう。
強いて、安心できたのは、
汚物を出し切っていたから、
下からの漏れがないことぐらい。
「麻……か、花恋はクソアマなんかじゃねぇわ」
とりあえず、
これだけは言いたかった。
俺は力尽き、
みっともない姿を皆んなに曝け出している。
「ちょっと、いい加減にしてよ!一方的に攻撃するなんて卑怯者がすることよ!」
今まで傍観だけしていたヤギちゃんが感情的になり、
ハッキンへと詰め寄るが、
ハッキンもすかさず、
反射的にヤギちゃんへと向けて手を振り翳す。
だけど、
ヤギちゃんは巧みにパンチを躱《かわ》し、
御返しと言わんばかりの素早い正拳突きを、
ハッキンの顔面スレスレに、
寸止めで見事に止めて見せた。
腰が引けて崩れ落ちてしまったハッキンを見て、
誰しもが心でヤギちゃんに拍手を送ったことだろう。
さすが黒帯の持ち主、
救世主《ヒーロー》とはこのことだった。
「うわっ…………、ごッめん……なさい」
どうやらもう安心してもいいみたい。
産まれたての子牛のように上手く歩けず、
立って転けてを繰り返すハッキンは、
俺たちの許から走り去って行く。
「ありがと、ヤギちゃん!ホント、助かった」
俺は変な体勢のまま手でグッドサインを作り、
苦悶の表情を最大限まで曝け出しながら、
ヤギちゃんへ感謝の言葉を送った。
そして、
皆がヤギちゃんを囲むようにして称え、
ヤギちゃんが賞賛される中、
俺のところに真っ先に来て、
物凄く心配してくれる者が一人だけいた。
それは、花恋だ。
出来ることなら上半身を地面に着け、
お尻だけ持ち上がった俺の体勢を見て、
笑わないでおくれ。
心配そうに見つめる眼差しは本物だとしても、
プルプルと震えた唇だけを見ると、
全部が台無しになってしまう。
でも、無理はない。
俺の変な体勢が、
どうやら花恋にとってツボなのかもしれないしね。
すると、
少し遅れてから、
皆が俺の容体を心配し、
具合を気にかけてくれた。



