考えれば考えるほど、
お腹の調子が悪くなっていく、
俺は駆け込むようにしてトイレへと向かった。
便座に座ると、
視界に広がるお花畑。
次から次へと学生が出入りする男子トイレの中で、
俺は悲鳴をあげる腸内ガスを、
音が漏れ出さないように、
何分割に分けて透かしっ屁することを試みた。
が、
溜まりに溜まった腸内ガスは制御することはできず、
とても聞いてはいられない汚い音が、
ゲリラ豪雨の如く鳴り響いている。
正体がバレてないだけマシなのに、
ドア越しから聞こえる笑い声が気になって仕方がない。
それに興味深い話までもが聞こえてくるから、
そっと耳を傾けた。
「児童学科にだっちんって奴いんじゃん?そいつ、ヤギちゃんのこと好きらしいで」
彼らの会話に確かな信憑性を持てないが、
ブゥ、ブブゥ、
とまだ出しきれていなかった腸内ガスが会話を遮るように邪魔をしていた。
おいおい、
だっちんってB専《ブサイク専門》なのか。
イケメンはよく、
容姿が整っていない人に対して特別な好意や関心を持つとは聞いたことはあるが。
よりによって、
ヤギちゃんを選ぶなんて、世も末だな。
「ヤギちゃんって、あの可愛い子?」
「そうそう、もう3人も振ってるって噂だよ」
おちょぼ口をあんぐりさせ、
ヤギちゃんのモテっぷりに仰《の》け反ると、
俺が見ていた世界を疑ってしまった。
ヤギちゃんのことを可愛いと映る目や脳が正常なら、
俺の目や脳は異常なのだろう。
にわか信じがたいことが現実で起きていることに、
俺は愕然としている。
たとえ世界でヤギちゃんと2人だけになったとしても、
ヤギちゃんとだけは付き合えない、
そう俺は言いきれる。
彼らが男子トイレから出るのを扉の開閉音で確認すると、
俺は忍び足でその場を後にした。



