灰色の空が広がる高校の屋上で、俺はただじっと空を見上げていた。

 彩芽と最後に会ってから、もう4日が過ぎた。

 どうすればいいのか、答えが見つからない。

 頭のいい奴なら、きっと正解を知っているのだろうか。

 分からないでいてほしいな。

 勉強ができる奴も、同じように悩んでいてほしい。

 報われないのが馬鹿な奴だけなんて、せめて感情の世界では通用しないでほしい。

 冷たい雨がしとしとと降る中、俺は傘もささずに濡れた道を歩いていた。

 寒さが身に染みる。

 凍えるような空気に、涙がこぼれそうな感情が込み上げてくる。

 雨が降っている今日は——彩芽に会える日だ。

 鬼ごっこ、だったっけ。

 そんな遊び、最後にしたのは小学生の頃。

 というか、彩芽以外の誰かと遊ぶことすら、それ以来だ。

 それでも、会いたい気持ちと、会って何になるのかという疑問が交錯して、心に溝ができる。

 楽しみだけど、怖い。

 それでも、楽しもう。

 彩芽はそれを望んでいる。

 深く息を吸い込んで、覚悟を決めて公園へと足を踏み入れた。

「やっほ、蓮」

 東屋の椅子に座って、彩芽が手を振っている。

「うん」

 隣に座ろうとした瞬間、「タッチ」。

 俺をからかうようにちらちらと見ながら、彩芽は一目散に駆け出した。

「え、ちょっと」

 滑り台の上から手を振り、「こっちだよ」と叫ぶ。

 張り詰めていた神経が、雨水のように木々の根元へ染み込んでいく。

 肩の力が抜けて、自然と笑みがこぼれた。

「待ってよ」

 滑り台へ向かって走り出す。

 車窓に跳ね返る雨粒のように、鮮明な滴が視界に映る。

 踏み出した地面に波紋が広がり、水滴が身体に跳ねる。

 まるで、すべての雨が自分に降り注いでいるような感覚。

 髪も制服もびしょ濡れになりながら、二人で思いっきり走り回る。

「タッチ」

 振り返った彩芽の顔に、ぱっと笑顔が咲いた。

 世界が一瞬で鮮やかに彩られる。

「待て」

 わざと悔しがるような仕草で、俺を追いかけてくる。

 楽しい。

 ああ、失いたくない。

 ずっと、このままでいたい。

 大粒の雨に打たれながら、俺たちは全力で駆け回った。

 現実の重さから逃れるために。

 せめてこの瞬間だけでも、脳を騙すために。