オンラインゲームのフレンドは直属の上司だった

年度末になり、羽山さんの異動がないかハラハラしていたけど、結局異動はなかった。

のほほんとしていたある日、母から電話があった。

叔父が亡くなったとのことで、地元に帰ることに。

正直、地元には帰りたくない。

絶対に結婚の話をされるからだ。

羽山さんの話をしたら、連れてこいとか言われそうだし……まだそんな段階じゃない。

とりあえず適当に誤魔化して帰ろうと、新幹線に乗った。

平日だったから会社を休んで地元へ。

駅に着くと、母が待っていた。

「瑠美〜!」

他の親戚も何人か一緒だ。

「瑠美ちゃん、またお姉さんになったわねぇ」

「瑠美お姉ちゃん!」

──この前まで赤ちゃんだった妹の子も、もうこんなに大きくなっている。

私の地元の冠婚葬祭は、親戚中が集まる。

お通夜の後、本家にぞろぞろと移動。

増えていく親戚の子どもたち、結婚報告……

今日は結婚したばかりの従弟が奥さんを連れてきていた。

私よりかなり若い。

「瑠美、もうそろそろ孫を見せてくれ」

お父さんが毎回言うセリフ。

「お兄ちゃんとお姉ちゃんと妹の子がいるでしょ」

私が結婚しなくても、子どもを産まなくても、問題ないはず。

「瑠美が一人なのが心配なのよ」

お母さんが心配そうに言うけれど……

都会では私くらいの年齢で独身なんて普通だ。

「あ!そういえば、同じ学校に通ってたヒロ君も結婚してないって!」

ヒロ君……ああ、小学生の頃から私をからかってた、ふざけた男子。

間宮浩之。

中学ではよくケンカしてたな。

「今からヒロ君呼ぼうか!?」

「は!?なんで!?」

母は急いでどこかに電話している。

嫌な予感しかしない。

「やっぱり私帰る!!」

そう言っても、皆に止められ……

暫くして本家に若い男の人が入ってきた。

「あ、天川!久しぶり!」

……誰?

「あー!ヒロ君、すごいお兄さんになってる!」

親戚中が賑わう。

この狭い地域では、ほぼ全員が家族同然だ。

「ヒロ君、何の仕事してるのー?」

姉が聞く。

「隣の県の建築会社です!」

思ったより、ちゃんと社会人していた。

「瑠美はどこで働いてるの?」

「えーと……東京の商社」

「え!すご!超都会人!芸能人と会ったことある?」

──絶対に聞かれるこのセリフ。

「ないよ、私は」

「ヒロ君、うちの子とかお嫁さんにどう?」

母が余計なことを言う。

「お母さん、やめて!!」

私には羽山さんがいるのに!

「うーん……俺なんかには勿体ないですよ」

そう断っておけば当たり障りない。グッジョブ間宮。

「何言ってるの、遠慮しないで!」

どんどん盛り上がっていく親戚たち。

限界になって、本家を飛び出した。

海の近くまで来て、

「私が好きなのは羽山さんだー!」

と叫んでしまった。

「羽山さん?」

え……振り返ると、間宮が立っていた。

「え、追いかけてきたの?」

「追いかけろって言われて……」

──なんで余計なことばかり。

「だから帰りたくないんだよ、実家……」

「まあ、今どき古いわな……」

間宮と二人で海を眺める。

「天川、すごい綺麗になっててびっくりした」

「え?」

私なんて都会では、その辺のたんぽぽみたいなありふれた存在だ。

「ありがとう。お世辞でも嬉しい」

「羽山さんって彼氏?」

う……言って大丈夫か?

「会社の上司で……恋人」

「上司!? 上司が彼氏なのか……」

「結婚しないの? その上司と」

私はできたら嬉しいけど……羽山さんはどう思っているのかな。

エタクエでハヤテはあまるにプロポーズしたけど、あれはあれ。これはこれ。

「わからない……」

その時、着信があった。

羽山さんからだった。

「もしもし!お疲れ様です!」

「お疲れ。どう? そっちは」

羽山さんの声……私は喜びに浸っていた。

「え? 彼氏から電話??」

間宮が口走った。

「………誰といる?」

羽山さんが不機嫌に。

「地元の男友達です!」

「わかった。こっちで待ってる」

通話が切れた。

最悪だ……!

「間宮が余計なこと言うから、羽山さん怒っちゃった!」

「ごめん……」

「あ……俺さ、実は結婚するんだわ」

「え!?」

「まだ誰にも言ってなくて……」

そうか……どんどん皆、身を固めていく。

「お幸せに」

私も私の幸せのために、頑張らないと。

二人で本家まで戻り、私はすぐに布団に入って寝た。

そして始発で東京に帰った。

早く……早く羽山さんに会いたい。

『これから帰ります』

羽山さんにメッセージを送る。

まだ寝てるかな……

その後すぐに返信がきた。

『待ってる。』

結婚するかどうかは別として、私は今、羽山さんに夢中だ。

そのまま少し眠りについた。