オンラインゲームのフレンドは直属の上司だった

羽山さんは、あの次の日から出張だった。

ほんの数日だけど、物理的に距離が離れるのは本当に辛い…。

羽山さんの居ないデスクを見ると、胸が苦しくなる。

私は休憩時間に屋上にいた。

空を見ながら、羽山さんの事を考えていた。

こんなに人を好きになった事がなかった。

そしたら…

いつの間にか鈴木さんが隣にいた。

「鈴木さんいつからいたんですか!?」

気配を全く感じなかった。

「五分くらい前」

相変わらずニコニコして、何を考えてるかわからない。

「天川さんさ、羽山の事どう思う?」

これは本音を言ってもいいのかな…

「今離れてて、会えなくて辛いです…」

鈴木さんは笑った。

「羽山凄い愛されてるな。羨ましい」

素直に言いすぎて恥ずかしくなった。

「俺も2年前、本気で好きになった子が居たんだけど…上手くいかなくて別れて、それずーっと引きずってるんだよね」

鈴木さんにそんな過去があったのが意外だった。

「どうして上手くいかなかったんですか…?」

鈴木さんはゆっくりと何かを思い出していた。

「すれ違いかな…。思っててもちゃんと言わないと、伝わらないからね」

私は…思ったことが顔に出てしまうし、言っちゃうし、それがある意味続いてる要因なのかな…

といっても一年も付き合ってないけど…

「後悔しないように、伝えたい事はちゃんと言った方がいいよ。って羽山に伝えといて」

そして、鈴木さんは屋上から去って行った。

鈴木さんの言葉を胸に、私は羽山さんが帰ってくるのを、ただただ待っていた。

◇ ◇ ◇

会えない数日間を、羽山さんの通話とメッセージだけでなんとか耐え抜いた…。

私は通話で泣きながら「会いたいですー!」って言ってて、いい年して情けないけど、鈴木さんの言う通り、後悔はしたくない。

「わかったわかった」

そんな風に制された数日。

やっと羽山さんが帰ってくる…!

帰りが深夜になりそうだからと、エタクエで会う約束をした。

私は仕事から帰ったあと、ログインしてずっと待機していた。

しかし、そんな日に限って、眠気が急激に襲ってきて、うとうとしていた。

そしてソファに座ったまま寝ていたら、スマホにメッセージがきた。

『ただいま』

急いで起きた。

「羽山さん!!」

その時、あまるの目の前にハヤテがいた。

嬉しくて通話したけど…

なぜか出てくれない…

ハヤテに導かれるまま、とある町のショップに行った。

ハヤテは何か買って、その後、次はまた違う町に来た。

そこは大聖堂がある町だった。

私の知らないイベントかな?

隠しイベント?

よくわからないままハヤテを見ていたら、アイテムを渡された。

それは──

ウェディングドレスだった。

え??

私は電話をかけた。

次は出てくれた。

「羽山さん!このゲーム、ウェディングドレスあるんですね!かなりびっくりしてます」

羽山さんは少し笑ってた。

「驚くのそこなんだ」

ハヤテは装備を変えた。

それはウェディングドレスに合うタキシードスーツだった。

「え!?」

これはまさか…

「羽山さん…これは…」

暫く羽山さんは何も言わなくなってしまった。

「ごめん、無理、電話はやめよう」

通話を切られてしまった…

ハヤテに導かれて、聖堂の司祭がいる祭壇に行った。

空いてるサーバーだったからか、近くにプレイヤーがいなかった。

ハヤテにまたアイテムを渡された。

それは──

アクセサリー装備の指輪だった。

こ、これは…

その時ハヤテがあまるに跪いた。

『結婚して、あまる』

びっくりし過ぎて、

何も答えられない。

また羽山さんに電話かけても出てくれない。

あまるは…

指輪を装備した。

『ハヤテこれからも宜しくね』

ハヤテはまたハグしてくれた。

『あまる好き』

あまるとハヤテは夫婦になった。

羽山さんはその日ずっと電話に出てくれなかった。