「それほどは飲みませんが、日本酒は好きです」
「お、いいねぇ。じゃあ、夜は地酒も用意させよう」

 いいながら部屋に戻った一鷹さんは、次に、内風呂を案内してくれた。

「かけ流しの湯で少し熱いから、この蛇口から水を注いで、温度の調整をしたらいい」
「え、これって畳?」
「バスマットだと思えばいい」

 広い脱衣室の向こうに足を踏み入れ、驚いた。だって、普通ならタイル張りの床に、バスマットよろしく敷かれているのは、どう見ても畳なんだもの。勿論、座敷のと比べたら薄いし、カーベットみたいなものかもしれないけど。

「部屋にまで、かけ流しのお風呂があるなんて贅沢ですね」
「ここから見る庭がまた綺麗なんだ」

 一鷹さんは、いいながら磨りガラスの窓を横にずらす。すると、目隠しになっている木製の格子から庭を除くことができた。

「ちょっとした露天風呂の気分を味わえるだろう?」
「贅沢ですね」
「たまにの贅沢が心を癒してくれるものだ」

 内風呂の説明が終わると、一鷹さんは懐から手拭いを出し、濡れた手先を拭った。