「そうか? なにか困ったことはないか」
「困ったこと、ですか?」

 すずはいいなが小首を傾げるが、特に思い付かないのだろう。しばらくして「特には」と呟いた。
 自覚がないのか、それとも、すずの耳に届いていないだけなのか。

 会合でさんざんからかわれた嫁問題を思い出しながら、熱い茶を啜った。

「その、なんだ……変な噂を立てられたりは、していないかと気になってな」

 それとなく尋ねてみると、すずの白い頬がぱっと赤くなった。

「えっと、その……」

 言い出しにくそうに口ごもる。
 これは、俺がいわれてきたようなことを、すずも聞いていると思っていいのだろうか。しかも、様子から察するに嫌がられていないようだが。

 いや、ここで勘違いはよくないだろう。急いては事を仕損じるともいう。