温泉街を繋ぐ橋の上で涙を流していたら老舗旅館の若旦那に溺愛されました~世を儚むわけあり女と勘違いされた3分間が私の運命を変えた~

「この五年間で恋結びが叶ったという投稿も増えましたな」
「そちらを紹介する動画も順調なようですよ」
「ここいらで、結び橋で祝言を挙げるカップルでも現れるといいのですがねぇ」

 ついと全員が俺の方を見た。

「聞きましたよ、賢木屋さん。若い仲居さんが入ったそうじゃないですか」
「垢抜けた美人でしたね」
「もう見たのかい、野木さん」
「見たもなにも、賢木屋さんと連れだって家具屋に行ったからね。こりゃ、ただ事じゃないと思ってね」

 噂好きの野木さんに見られていたのか。
 口をつけていた酒を吹き出さなかった自分を褒めたいな。内心で苦笑しながら「入り用があって車を出しただけですよ」といえば、野木さんは「またまた」といってニヤニヤ笑った。

「賢木屋さん、ここは一つ、結び橋で盛大にプロポーズなんてどうですかね?」
「……柏木さん、勘弁してくださいよ」

 ほろ酔いになった若旦那衆から、どっと笑い声が上がった。