温泉街を繋ぐ橋の上で涙を流していたら老舗旅館の若旦那に溺愛されました~世を儚むわけあり女と勘違いされた3分間が私の運命を変えた~

 今日の議題は、正月のイベントについてだ。
 元旦には各旅館で振る舞い酒をしたり、餅つきや雑煮を振る舞う他に、温泉街総出で執り行う二大イベントがある。それが、初湯巡りと恋結び祈願祭だ。

「皆様の寄付により、今年の初湯巡り抽選会の景品は滞りなく整いました」
「目標の元日宿泊者数も、どの旅館も達成できそうですな」
「うちのところは、元旦よりも恋結び祈願祭の日が繁盛しそうですよ」

 資料を見ながら、話し合う面々の報告が続いた。

 初湯巡りに使われる宿泊者用木札の準備、温泉街の正月飾りの注文に、各所に貼り出すポスターや広告の手配などの確認が進んでいく。
 毎年やっていることではあるが、今の若旦那衆はどちらかといえば祭り好きが多く、率先して動いてくれる。

 若女将たちにいわせれば、酒を飲む口実を作りたいだけらしいが。

「祈願祭は今年で五年目となりますね」

 俺が差し入れた酒が運ばれる頃に、誰かがいった。