「会合に赴くのは、大した用意でもないだろう」
「だから、そうじゃなくて。嫁さんが送り出してくれるってだけでも良いもんだって」
「……惚気たいだけじゃないか」
ため息をつくと、周囲から「それくらいにしておけ」と笑い声が上がる。
上座に座る白楼館の若旦那──柏木さんが膝をパンと叩くと、一同そろって無駄話をやめた。若旦那衆の中では年長となる。この若旦那の会合を長年取り仕切っている人で、俺もずいぶんと世話になっている。
「賢木屋さんの嫁候補の噂話も聞いてますが、本題を片付けてからにしましょうかね」
穏やかな口調で、しっかり釘を刺して本題に入るあたり抜け目がない人だ。
なにせ、湯乃杜温泉街で嫁をもらってないのは俺くらいだからな。しかも、賢木屋は白楼館に次ぐ創業年数ともなれば、周囲だって跡継ぎ問題を気にするものだろう。
とはいえ今は、新年の集客イベント準備が大詰めだ。
「だから、そうじゃなくて。嫁さんが送り出してくれるってだけでも良いもんだって」
「……惚気たいだけじゃないか」
ため息をつくと、周囲から「それくらいにしておけ」と笑い声が上がる。
上座に座る白楼館の若旦那──柏木さんが膝をパンと叩くと、一同そろって無駄話をやめた。若旦那衆の中では年長となる。この若旦那の会合を長年取り仕切っている人で、俺もずいぶんと世話になっている。
「賢木屋さんの嫁候補の噂話も聞いてますが、本題を片付けてからにしましょうかね」
穏やかな口調で、しっかり釘を刺して本題に入るあたり抜け目がない人だ。
なにせ、湯乃杜温泉街で嫁をもらってないのは俺くらいだからな。しかも、賢木屋は白楼館に次ぐ創業年数ともなれば、周囲だって跡継ぎ問題を気にするものだろう。
とはいえ今は、新年の集客イベント準備が大詰めだ。


