一口含めば、ふわりと甘くふくよかな香りが広かった。まるで、炊きたてのご飯のような優しさだ。
意識せずに「美味しい」と呟くと、一鷹さんは嬉しそうに笑って「そうだろう」といい、私のお猪口に日本酒を継ぎ足した。
「見た目によらず、呑める口だな?」
「そんなことはありません。でも、こんなに水のように呑める日本酒は始めてです」
繊細な味の料理を邪魔しない日本酒に、舌鼓を打つ。そうして箸を進めながら、ふと、うちの式場でお出ししたら喜ばれそうだと考えてしまった。
もう職場には戻らない。横浜には帰らないと決めたのに。
自分の中に未練があると気付き、とたんに身体がこわばった。箸が止まり、食べかけの小鉢をテーブルに戻す。
「どうした。口に合わなかったか?」
「いいえ……とても美味しいです」
きっと料理人さんが毎日出汁をとり、丁寧に野菜の下ごしらえをしているのだろう。なめらかな海老のしんじょうに、歯触りのいいホウレン草の和え物、どれをとっても温かいお料理だ。
意識せずに「美味しい」と呟くと、一鷹さんは嬉しそうに笑って「そうだろう」といい、私のお猪口に日本酒を継ぎ足した。
「見た目によらず、呑める口だな?」
「そんなことはありません。でも、こんなに水のように呑める日本酒は始めてです」
繊細な味の料理を邪魔しない日本酒に、舌鼓を打つ。そうして箸を進めながら、ふと、うちの式場でお出ししたら喜ばれそうだと考えてしまった。
もう職場には戻らない。横浜には帰らないと決めたのに。
自分の中に未練があると気付き、とたんに身体がこわばった。箸が止まり、食べかけの小鉢をテーブルに戻す。
「どうした。口に合わなかったか?」
「いいえ……とても美味しいです」
きっと料理人さんが毎日出汁をとり、丁寧に野菜の下ごしらえをしているのだろう。なめらかな海老のしんじょうに、歯触りのいいホウレン草の和え物、どれをとっても温かいお料理だ。


