温泉街を繋ぐ橋の上で涙を流していたら老舗旅館の若旦那に溺愛されました~世を儚むわけあり女と勘違いされた3分間が私の運命を変えた~

 震えながら伝えると、お母さんはしばらく黙ってから「なにか辛いことがあったのね?」と気遣うように尋ねてくれた。

 いつだって私の味方でいてくれたお母さん。
 辛い恋をする度に、背中を擦って慰めてくれた。

 泣きながら、彼が浮気をしていたことを伝えた。その相手が親友だとはさすがにいえず、ただひたすら謝った。

 結婚前提だからと、同棲の許可をもらったのに。

「お母さんのいう通りだったね……同棲なんてするんじゃなかった」
「家に帰ってらっしゃいな」
「……もう少し、一人で考えたいから」
「そう……でも辛いときは、いつでも帰っていらっしゃい。ここは、すずの家なんだからね」

 うんうんと頷きながら泣いた。
 目が腫れるのも構わず涙を擦り、お母さんの「大丈夫だからね」と繰り返される声に、ごめんねとありがとうを何度も繰り返した。

 通話を切り、しばらく縁側の椅子に座って庭を眺めた。