もうひとつのバースデイ

「桐生さん、これありがとう」
 月曜の昼休み、高崎先生は、私が貸していたコアーズのCDを返してくれた。
「あ⋯⋯!私、お借りした本、まだ読み終わってなくて⋯⋯」
「それなら、いつでも構わないから、ゆっくりどうぞ」
「ありがとうございます」
 この小さなメンタルクリニックは、昔ながらの医者といったタイプの院長先生と、心理の高崎先生以外は、女性ばかりの職場である。
 女性は全員、ずっと年上の主婦ばかりということもあり、よく話す人というと、いちばん年齢が近く、独身の高崎先生だ。
「なんだか、元気がないけど⋯⋯大丈夫?」
 職業柄なのか、高崎先生はなかなか鋭い。
「え!?すみません⋯⋯!」
「いやいや、別に業務に支障が出てるわけじゃないよ。声かけようとした時に、大きなため息をついてたから」
 そう言ってくれるが、私生活でブルーになっているのを職場の人に気づかれてしまうなんて、やはりよくないだろう。