もうひとつのバースデイ

 地下鉄の遅延⋯⋯。
 もしかして、太田は珍しく時間を守るつもりだった?
「桐生さん⋯⋯」
 恐らく、先生も同じことに気付いたのだろう。
「先生。どんなお店に連れてってくれるんですか?」
「え?隠れ家的な、小さなイタリアンレストランがあって⋯⋯」
「素敵ですね!楽しみ」
 先生が、ずっと何か言いたそうなのはわかっていた。
「ホントに大丈夫ですって!地下鉄の遅延だろうと、遅刻は遅刻です。下手に間に合ってたら、結局ズルズル付き合い続けることになったかも⋯⋯そんなの、嫌ですよ」
「僕は、100%善意だけで口出ししたわけじゃないから、本当に申し訳なくて⋯⋯」
「じゃあ、先生が責任とってくれます?」
 私は、ガラにもないことを言ってみた。
「え!?そりゃ、もちろ⋯⋯」
「冗談ですよ!行きましょ?」
 小春日和の心地よい風を感じながら、私たちは微笑み合って歩き出した。


FINE