もうひとつのバースデイ

「本当に、今日は綺麗だよ。いや、いつもは綺麗じゃないって言ってるわけじゃなくて!だから、その、せっかくおめかししてるなら⋯⋯」
 そんな先生の言葉を遮るよう、
「悪い。ちょっと遅れたわ」
 聞き飽きた声に顔を上げると、目の前には太田が立っていた。
「おい⋯⋯その男は誰だよ!今日はちゃんと早めに来たってのに、お前、どういうつもりなんだ!?」
 太田は、みっともなく大声で怒鳴る。
 時計を見ると、いつものような大遅刻ではなく、5分の遅刻ではあったが、
「今日は、1分でも遅れたら別れるって言ったはずよ。腐れ縁もこれでおしまい。今までありがとう。さよなら」
 淡々と告げると、太田の横をすり抜けて歩き出す。
 ポカンとしていた太田は、追ってくることもなかった。
 私も、決して後ろを振り返らない。
 少し慌てたように、隣を歩く先生。
「桐生さん、本当に大丈夫?」
 私はゆっくりと頷く。