もうひとつのバースデイ

 まさかね。
 この期に及んで、まだそんなことを考えているとしたら、私はとんだバカ女だ。
 長年の付き合いの彼氏に、軽んじられて、舐められて⋯⋯。
「あんたと違って、大事にしてくれる人なら、他にいくらでもいるのよ」
 そんな風に言えたら、どんなにスカッとするだろう。
 腕時計の針は、12時29分をさしている。
 デジタルの時計ほど厳密ではないが、少なくとも1分以上の狂いはないように合わせてある。
 そして、針は30分をさした。
 店内を見渡しても、窓の外を見ても、太田の姿はない。
 やっぱりね⋯⋯。
 正直なところ、きっと彼は今日も約束を守らない気がしていた。
 私は、立ち上がると会計を済ませて店を出る。
 何もかも、自分で決めたことだ。
 不思議なことに、悲しいとは思わない。
 ただ、この7年は何だったのか?という虚しさはある。
 鞄の中のヘッドホンを探していると、
「誕生日おめでとう」