もうひとつのバースデイ

 思えば、太田は、すっぽかしても謝らないのも、もう当然になってきている。
「彼は、確かに桐生さんのことを好きだと思う。でも、何をしても許されると甘えてるね」
 先生は、そんなことも言っていた。
 太田から、結婚の話が出ないことにモヤモヤしていたが、本当はそこではないような気がする。
 万一、結婚したとしても、太田と一緒に人生を歩めるとは思えない。
 別れる為に、理由やきっかけなど、もう必要ないのだろう。
 しかし、自分に自信もなく、勇気もない私には、何かが欲しかった。
 カレンダーを見遣り、来週末は私の誕生日だということを思い出す。
 いつも、特に細かい約束をせず、週末にあのカフェで待ち合わせているのだが、私は敢えて太田に電話をかけた。
「もしもし?」
 太田の声以外に、やけに大きい音楽や、ジャラジャラとうるさい音が聞こえてくる。
「桐生ですけど。聞こえてる?」
「ああ。今パチンコ中」