もうひとつのバースデイ

 ましてや、自分が多く払ったような顔をして、相手に多く払わせるなんて、論外。
 短い距離でも歩幅を合わせてくれるとか、帰りの時間を気にしてくれるとか、夜だから自宅まで送ってくれるとか⋯⋯そういうさりげない思いやりが、太田にはまるでない。
 昔はどうだっただろう?やはり、もう思い出せない。
 別れない理由⋯⋯それは、先生に言った通り、別れたとしても、次の恋が見つかるかどうかわからないから。
 ただ、それだけの理由でこれからも続けていくのは違う気もする。
 そうは言っても、簡単に別れを告げる勇気もない私⋯⋯。
 何か、きっかけがなければ、別れを告げることはできない。
 ふと、固定電話の留守電が点滅していることに気付いた。
 聞いてみると、実家の母親から、法事云々という話だけで、太田からは何もない。
 大遅刻だったのか、すっぽかしたのかは知らないが、普通はちゃんと謝るものではなかろうか。