もうひとつのバースデイ

 店を出て、自分の飲み食いしたお金を渡そうとすると、
「いらないって。僕が誘ったんだから」
「でも⋯⋯」
「よく、会計の時だけ、急に男女平等を主張する男っているでしょ?あれは本当にみっともない。反面教師にしてるんだ」
 先生は、そう言って笑う。
「では⋯⋯ご馳走様でした」
 今日は飲んでいないということで、自宅まで車で送ってくれた。
「じゃあ、またね」
「はい。今日はありがとうございました」
「こちらこそ楽しかったよ」

 下宿の個室に戻ってから、ふと思った。
 これは別にデートではないものの、一般的なデートとは、こういう感じなのだろうか?と。
 何しろ、私は太田以外とデートしたことがないので、よくわからない。
 あとになって気付いたが、先生は、私と一緒に過ごしている間、一度もスマホを見たりしなかった。
 先生と一緒に居る間、ずっと快適だった理由は、それもかなり大きかったような気がする。