もうひとつのバースデイ

 職場であるメンタルクリニックを出ると、そのすぐ向かいのカフェに向かう。
 今日は第1土曜日で、私の仕事は半日、彼氏の太田は休み。
 12時15分。約束の時間まで、あと15分。
 いつものように、文庫本を取り出して読み始めた。
 しばらくして、時計を見遣ると、既に13時半を過ぎている。
 いつものことだけれど⋯⋯。
 諦めに似た気持ちで、再度、文庫本を読み始めた。
「悪い。ちょっと遅れた」
 そう言って太田が現れたのは、14時。
「1時間半の遅刻って、ちょっとなんだ?」
 一般的な社会人であれば、1分の遅刻も許されない。
 太田は昔から時間にルーズだったが、仕事がフレックスタイム制のせいか、今や遅刻という感覚が完全になくなったのだろうか。
「そういうネチネチした嫌味を言うなよ。こっちは素直に謝ってんじゃん」
 まるで、私が悪いとでも言わんばかりだ。
 ため息をついて、文庫本を閉じる。