花は夜に咲く

けれど、もう遠い。


瞼が重くて、開けていられない。


「眠るな。」


低く、焦った声。


その声が、ひどく暖かかった。


そのまま身体が宙に浮く。


零が私を抱き上げたのだと気づくまで、少し時間がかかった。


夜風の音、車のドアの開く音。


「……大丈夫だ。もう怖くない」


その声に、最後の意識が少しだけ安心を覚えた。


そして私は、零の腕の中で、完全に意識を手放した。