ミーニングレス

「別に嘘でもいいんだよ、芸能界なんて嘘ばっかりなんだから」
「アイドルだって恋愛禁止とか言ってるけど、全然付き合ってる人とかいるし」

俺がそう言うと羽呑は目を丸くして驚いていた
「え、そうなの?」
「子役やってたのに、気づいてなかったの?」
「流石に子役って言っても子供だからそんなの必死に隠すに決まってるでしょ」
「まぁそうだね」
「あと一つ、理由があってさ」
「なに?」
「羽呑って天才子役だったじゃん?」

正直言うと、今から羽呑に言う理由はどーでもよかった

「そうだけど、それが?」
「羽呑と同じ年に生まれちゃった子役は全部羽呑にやりたい役を取られてきたんだよ」
本当に羽呑と同じ年に生まれた子役を哀れに思う
「それは仕方ないでしょ、実力の差だよ、才能がないんだよ、才能が」
少しばかり言い方がうざいが気にしないことにした
才能という言葉を強調するところあたり羽呑らしいけど

「でもー、羽呑が子役辞めちゃったから才能のないパッとしない子役がそのときは主演とかやってたんだよ」
「そのときは映画やドラマの質が落ちて、大変だったなー」
「でもね、ずーっとそんな下手な演技を見てたらさ、どんなに〝下手〟な演技だとしても、多少は上手に見えちゃうわけ」
「だからさ、そんな下手な役者が今でも評価されちゃってるの、まぁ咲羅がいるから下手には見えるんだけど」
「咲羅が上手すぎて、大体そんなものかなーって思っちゃうんだ」
「だから、この世界に刺激を与えたいんだ」

こんな理由ではない、もっと単純な理由
羽呑には芸能の才能がある、それはアイドルでも役者でも、モデルでも、なんでもこなせるほどの才能
周囲の人を惹きつけ魅了する、芸能人には持ってこいの才能だ
そんな芸能の天才を事務所やプロデューサーが放っておくわけもなく、絶対に芸能界に入れたい、と事情を知っているテレビ関係者や事務所関係者に俺が迫られ、スカウトしてこいと言われたからだ

「どう?このスカウトはアイドルのスカウトじゃない」
「俳優のスカウトだ」
「どういうこと?」
「アイドルオーディションに参加してる参加者だと思ったら、まさかの元天才子役が演技をしていたドッキリ企画!?って感じ」

羽呑は頭脳てきにも天才だから、こんなつらつらと嘘を並べているとバレそうで正直怖い