リハーサルを一通り見学し、私はHIROの招待に応じてHIROの部屋に行く。
 隣の木造建築のアパートの扉を開けたそこは、貧乏を絵に描いたような部屋だった。
 扉が閉まる音がギィィとうるさい。
 HIROが内鍵をかける音がした。

 4畳半というのだろうか、狭い部屋には本当に何もない。
 芸能人というのは儲かるのかと思っていたが、ごく一部の上位層だけのようだ。
 私はここに来て歌って踊っているテレビや雑誌のHIROが好きなだけで、目の前の小柳真紘には興味がないことに気が付き始めていた。それでも、彼に近づき彼を守りたいと思う。
(私の孤独を救ってくれ続けた人だからかな⋯⋯)