私は薄れゆく意識の中で、HIROの屈託無い笑顔が見たいと願った。
 
 
♢♢♢

 目を開けるとお手伝いさんが百本近くある大きな真っ赤な薔薇の花束を抱えている。私はどうやらダイニングルームにいるらしい。朝日が差し込むテーブルの上に朝食が用意されている。

「凛音お嬢様、素敵な赤い薔薇の花束が婚約者の曽根崎玲様より届いてますよ。17歳のお誕生日おめでとうございます」
 
 私は目の前にあるエックベネディクトに思いっきりフォークを突き刺した。
 真っ黄色な黄身が漏れ出してきて、私は唐突に17歳の誕生日のことを思い出した。