焦がれる吐息






首と頬に、柔らかな髪が触れている。

白色の明かりのせいで余計に眩しい金の髪。それが視界をチカチカと占領していて、体が石のように固まった。

百瀬くんの頭が、私の肩に……??


「……あ、の?」


「1分だけ、」


切羽詰まったような声が、鼓膜を揺さぶった。


「1分だけでいいんで、寄り掛かっていいですか」


すり、と更に私の肩に擦り寄ってきた百瀬くんに、思わず肩を窄めて身構える。

突然で何がなんだか、どんな状況なのか、頭が追いつかない。

それでも、鼻腔を蕩かす好みの香りに、凭れ掛かってくる彼の重みに、胸がキュンと反応してしまう。


「澄香さん、」



こんな体勢で、必要もないのに、縋り付くように私の名前を呼ぶ狡い彼を、振り払うことの方が難しい。


止まりかけていた息を一つ、静かに吐く。


そういえば、長いこと煙草を吸ってないな、なんてどうでもいい事が頭の片隅に浮かんだ。



「……まあ、3分までは許容範囲、です」




言ってすぐ、かあっと身体を熱くする私は、丸めた両手にぐっと力を込めて苦しい動悸に耐える。

何を言っているの?と、心の中の自分が冷静に突っ込んでみてももう遅い。キャパオーバーで、パニックを起こしている頭は正常に働いていなかった。


すると、百瀬くんは返事の代わりに、


「……もう、」


震えた潤み声をこぼして。

そっと長い睫毛を伏せ、苦しげな吐息をついた。


中途半端な言葉のその先は、3分過ぎても紡がれることはなかった。