焦がれる吐息




不可解なことに眉を寄せながら、もう一度テーブルに視線を戻せば一輪の花の横にある小さなメモ用紙に気づく。


『今日から1ヶ月間、韓国に出張に行ってきます。どうか怒らないでね♥ケンジ』


……いや怒りはしないけど、この部屋は一体…?

達筆な字で書かれたそれに、一旦、ケンちゃんの不可解な行動について考えるのを放棄した。

寝起きでちょっと、頭がまわらない。


ガーリーな部屋から目を瞑るように、洗面所へと足を運ぶ。

鏡に映るのは、まだ眠そうな顔した寝癖がついた自分がいる。

胸下まで伸びたネイビーアッシュ色の髪の毛を大雑把にもちあげて、おでこ全開でトップ高めにおだんごにして纏める。

韓国いいなーお土産はやっぱり化粧品かなーなんて、ぽけっとしながら身支度を整えて。


いつもだったらここで、のんびりベランダで煙草を吸うところだけど。

リビングに戻ってまた視界にとびこむ乙女空間にげんなりした気持ちになったから、そそくさと身体を動かした。


ゴミ捨てのついでにコンビニでも行こう、と。

片手にゴミ袋をもって玄関へと向かい、つま先にファーがついたフラットなパンプスに足を通す。

深いグレーの色味が可愛くて最近のお気に入りだ。

ほんの少しるんと弾んだ気分になりながら、ちょうどU字ロックを開けたとき。

唐突にドアの外から、ガチャガチャと鍵を差し込む音がした。