「眼差しとか、甘ったるい匂いとか、特有の身体つきとか。苦手とか嫌い以前に、無理なんです。女性っていう生き物が。」
淡々と紡がれてゆく言葉たちが、ひとつひとつ、細い針のように私の喉をチクチク通る。
あまりにもはっきりと告げる百瀬くんに「私も一応、女です」なんて。
思わず出かけた言葉をぐっと呑み込めば、胸の真ん中にジクッと刺さるような痛みを感じた。
(かわいい尾崎はだめで、どうして私は平気なのだろう)
そんな新芽の疑問は、しなしなと萎んでゆく。
まだ出会ったばかりの私たち。でもこうして堂々と話してくれるという事は、百瀬くんは私を“女性”として見ていないとしか考えられなった。
いつもの私だったら、それに喜び、胸を撫で下ろしていたと思う。
男性から女性として見られることが、怖くて嫌だったから。
でも、今、とても虚しい。
なんだか、耳を塞ぎたい。
視界に映る鮮やかな落ち葉が、途端に切ない色に見えてしまった。
返す言葉を見つけられないでいれば、ふと、青い瞳がこちらを向く。
私と瞳を重ねた百瀬くんは、不思議なくらい穏やかに桜色の唇を弓なりにした。
「アレルギーってあるじゃないですか」
「……アレルギー?」
「小麦粉とか、卵とか、アレルギー持ってる人。それと同じ感じじゃないですか?」
なんて事ないように、いつも通りふわりと首を傾げた百瀬くんに、不覚にも涙が突き上げてきてしまいそうだった。
どうして、そんなに綺麗に笑うのだろう。
どうして、そんな他人事のように言うのだろうか。
百瀬くんが軽やかな分、私の心は重くなって、切ない気持ちで満たされた。
あなたは、どんな世界で生きてきたの……?



