焦がれる吐息




結局、残りのポテトはぜんぶ百瀬くんが食べてくれた。「ご馳走様でした」と礼儀正しい彼は、やっぱり嬉しそうに目尻を垂らしていて。

ただのポテトで、手料理でもなんでもないのに、なんだか照れ臭くて。目も合わせずに「いえ」と素っ気ない返事しかできなかった。


せめて「食べてくれてありがとう」って一言でも返せば良かった。

もし尾崎だったら、「嬉しい〜ありがと〜〜」なんて、軽く可愛い反応ができるだろう。


尾崎の人懐っこい笑顔を思い浮かべてしまえば、自分でも謎にしゅんと肩が小さくなる。

そして、先程抱いた疑問が再び頭をよぎってしまった。



バーガーの包み紙を小さく折ってから、そっと隣を見上げてみる。


「……あの、一つ聞いてもいいですか」


躊躇いがちに口を開けば、百瀬くんは静かに首を傾げた。やさしい色の瞳は、澄んだ秋空よりもずっと底深くて、ずっと綺麗だ。

相変わらず、その瞳をまっすぐ私に向けてくれる。

だからこそ、不思議でたまらない。


「……女性が、苦手なんですよね…?」


ミステリアスな瞳を窺うように見つめ返し、出会ったときからずっと喉元で引っ掛かっていた疑問をついに零してしまった。


「すみません、実はケンジから聞いていて」


彼の心に一歩踏み込むようで、とても緊張して。

小さくなった私の声に、彼は「そうだったんですか」と静かに視線を外した。


風の音も葉の音もない、ゆったりとした静寂の時間が訪れる。

小暗い木の下、美しい横顔を見つめて無意識にこくりと生唾を呑み込んだ。

百瀬くんがまた、消えてしまいそうに見えたからだ。時折、彼はとても脆く、危うい存在になる。




「……苦手というか、生理的に受け付けないんです。どうしてか、自分でもよく分からないんですけど」



呟くように静かに言葉を紡いだ彼は、ただまっすぐ、遠く、何かを見つめていた。