焦がれる吐息




「……なんか、朝から変ですよ」

「へん?」

「変です、すっごく」


ベランダでもそうだし、玄関前でもそうだ。

思い起こされる羞恥にさらに熱を上げながら、青い瞳を険しい表情で睨む。

すると百瀬くんは、「そうですか?」と惚けたように首を傾げながら膝に片頬杖をついた。


「……だとしたら、澄香さんのせいかも」


前傾の姿勢になった低い位置から、こちらを斜めに見上げてくる。目尻を緩めた瞳と絡み合う。声が、瞳が、その様がとても煽情的で、カアッと頬が熱くなった。


「意味分からないですし、人のせいにしないでください」


きゅっと鍔を下げて、また深く俯いた。

帽子を被ってきて、本当によかった……。

隠れて顰めっ面になる私は、ドキドキと苦しい胸を解放するように、ひとつ、溜め息を吐いた。

ゆらりふわり、着実に。百瀬くんの不思議な柔らかい雰囲気に呑まれてゆく。気づいたときにはもう、彼の手のひらの上でころころ転がされてしまいそうだった。


「……揶揄ってないで、手伝って」


おもむろに、ズン、と残り数本ポテトが入った袋を彼の前に突き出した。じわじわと染まっていく頬をもう見られたくなくて、咄嗟の抵抗だった。

丸くなる青い瞳に、ぐぐっと眉を寄せる。

てん、てん、てんと沈黙が流れたあと、ゆっくりと姿勢を戻す百瀬くん。「いいんですか?」と、青色の瞳はやさしい熱が篭っているようにみえる。


「……お腹いっぱいなので、良かったら」

「じゃあ、遠慮なく」


すらりとした長い指がこちらに伸びてくる。自分のポテトをあげるだけなのに、無駄に緊張して、とくとく鼓動がすぐそばで聞こえる気がした。

一本ポテトを摘んだ百瀬くんは、食べてすぐ、


「めちゃくちゃ美味しい」


もう冷めてそんなに美味しくないのに、さっきは言わなかったくせに、今までで一番美味しそうに垂れ目をふにゃっと下げる。

私の胸のトキメキ部位が何度も刺激されて、ずっと息が苦しかった。