焦がれる吐息





謎を秘めた麗しい彼に、ほんの一瞬、息も忘れて惹きつけられた。柔らかそうな金の髪が、ふわふわ、風にやさしく靡いていることだけは頭の片隅で理解できる。


視界の隅で銀杏の葉がはらりと降ってきたのを合図に、ぱっと視線を外した。


「……百瀬くん、そればっかり」


“何でもない”とか、“秘密”とか。

何かの一歩手前で上手にはぐらかされる。

私ばかりが翻弄されている気がして、くやしい。

むくれた顔で手元のバーガーを眺めれば、隣からはまたしても小さく笑う音がした。

そして、やさしいトーンで「すみません」なんて、少しも思っていないような声で言われる。

鍔からそっと覗き見れば、案の定、百瀬くんは柔くたれ目を細めてふにっと口元を緩めたままだ。

二人きりの此処に来た時からずっと、なんだか百瀬くんの雰囲気が軽やかで愉しそうで。

意味が分からない……けれど、それに私も素直に嬉しいと思ってしまうから、余計に悔しい。


「澄香さん、耳、赤くないですか?」

「気のせいです」

「でも、ほっぺもあかい」

「……日差しが暑いんです」

「木陰で寒いくらいじゃないですか?」

「………」


穏やかな空間に、艶やかな笑声が控えめに響く。

百瀬くんは、案外いじわるで、たちが悪くて、意外と笑い上戸ということを新たに発見してしまった。尾崎の前とは、ほんとうに別人だ。