焦がれる吐息





すると尾崎は、ふやんっと赤ちゃんみたいに頬を綻ばせた。

「でもほんと、今日のスミ先輩いつも以上にかわいいですよ?なんか女の子〜って感じします。メイクもいい感じ!!」

「……別に、いつもと同じだけど」

「え、明らか違うじゃないですか〜アイメイクもリップもばっちりですし。デートってつい気合い入っちゃうの分かります」


むふふ、と笑みを零しながら覗き込んでくるキラキラの瞳に、慌てて背を向ける。

……デート、じゃないし。

別に、気合いを入れたつもりはなかったのに。

百瀬くんの隣を歩くって想像しながら化粧直しをしたらこの様だ。

私の頭は、どうしてしまったんだろう。



「次シフト被ったとき、たくさんお話ししましょうねっ」なんて無邪気な声を背に、思いっきり溜め息を吐いた。


「じゃあね、」

いい加減足を踏み出したところで、ふと、尾崎にぴったりな可愛らしいお店が目に飛び込む。

肩越しに振り向けば、彼女は変わらず、ふやんとした笑みを振り撒きながらヒラヒラ手を振っていた。


「尾崎」

「はあーい?」

「ここのスタッフ、みんなそこの店のマカロン好きだよ」

「へ?まかろん?」

「そのかわいい顔で差し入れですって持ってけば、ギッスギスも少しは和らぐんじゃない」


ポカンと口を半開きにする尾崎に「がんばれ」と笑みを浮かべれば、ピンク色の頬がぼんっ!と瞬間的に赤く染まった。


「〜〜、で、でた!天然の人たらし!!」

「は?」

「その無自覚、そろそろ直した方がいいですよ!もうずるい!スミ先輩すき!!」


最終的にぷりぷりとし始めた尾崎はやっぱり面倒臭くて、「はいはい」と適当に返事をして百瀬くんの元へと向かう。