焦がれる吐息




「え、あたし、何かまずい事しましたか…?」

「……いや?それよりほら、休憩勿体ないよ」

「きゃーん、もっとスミ先輩と話したいのに〜」


また唇を尖らせる尾崎は、女の私から見てもお世辞抜きで可愛い。男が好きそうな魅力がぎゅうっと詰め込まれている。


百瀬くんはそんなかわいい尾崎はだめで、どうして私は平気なのだろう。

出会ったその瞬間からずっと、真っ直ぐ注いでくれる美しい瞳を心の中で見つめてみて。

解けた代わりにまた一つ、新たな疑問が芽生えてしまう。

 
「今すぐあがりたい〜あんなギッスギスなところに戻りたくない〜彼氏さんのこともまだ全然聞けてないですよ〜〜!」

私の両腕をぶんぶん振って駄々っ子になる尾崎に「だから違うって」と呆れた笑みを浮かべた。


百瀬くんが彼氏だなんて、天地がひっくり返ってもあり得ないのに。

そもそも彼氏云々の前に、恋というものすら未経験。一応、恋愛対象は男だけれど。その男が死ぬほど嫌いになったあの時から、私の中で恋愛という憧れも、結婚という夢も消滅した。


「え〜めちゃくちゃお似合いなのにぃ〜並んだふたり、ものすっっごく美しくて!雰囲気ぴったりっていうか!」

「んなわけないでしょ」

「ひゃ〜照れてる〜ちょ〜〜かわいい〜!」


お次はぴょんぴょん跳ね出した尾崎に、むっと眉を寄せながら手を振り払った。

百瀬くんと私がお似合い………。

その言葉に危うく私の心も、尾崎みたいにぴょんぴょん飛び跳ねてしまいそうで。そんな恥ずかしい感情は、心の奥底に押し沈める。