焦がれる吐息




「やっぱりスミ先輩だ!!スミせんぱぁあい」

「……尾崎、」


ぼよんぼよんGカップのお胸を惜しげもなく揺らしながら現れたのは、バイトの後輩、尾崎だった。

相変わらず甘ったるい香りが、ポワワンと鼻腔を挑発してくる。

色白小柄、ふっくらボディの尾崎。緩く巻かれたマロン色の毛先から、真紅色の爪先まで艶々と完璧に手入れしている彼女は私と180度異なる女子の中でも女子、ザ・女の子。

私がラベンダーやネイビーの落ち着いた下着を選ぶのに対して、尾崎は絶対的にピンクや白の可愛いらしいデザインを社販している。


「何この人集りって思ったらスミ先輩だったんですねえ〜!まさか芸能人?!なんかの撮影?!なんて思っちゃったじゃないですか〜」

「……尾崎は何してんの、ひとり?」

「急遽ヘルプに駆り出されたんですうっ!あ、いま小休憩なんですけど、ここのスタッフみんなギッスギスでえ〜」

マゼンタピンク色のぷっくりした唇を尖らせる尾崎は、よく見ればいつも休憩中に持ち歩いている花柄のミニバックを持っていた。

バイト先のランジェリーショップは全国展開していて彼方此方に店舗がある。まさに、今いるショッピングモールにも入っていて。私と尾崎が勤めている路面店の小さな店舗から、この大型店舗に誰かがヘルプに行くこともしばしばあった。


「あー」と適当に返事をすれば、「そんな事より!」とすぐさま細い腕が巻き付いてくる。そして、ぐるん、と百瀬くんに背を向けるように引っ張られた。


「あちらは彼氏様ですかっ……?!」


興奮しながら、コソッと耳打ちされたそれに思わず口をへの字に曲げる。

彼女は生粋の面食い。バイト先に遊びにくるケンちゃんと、よく二人でイケメンの話でキャッキャっと仲良く盛り上がっているのだ。


「違うから」

「またまた〜あんなにスーパーイケメンな彼氏がいるなら教えてくださいよ〜だから頑なに合コンも断ってたんですね〜まったくう!」

「違うってば」

「はいはい、スミ先輩、恋愛の話になるとすぐ照れるんだからあ〜もうかんわいい〜このこの〜」

「照れてない、ほんと、」

「誤魔化さなくていいですよ〜ん!あ、それともこれは極秘なんですね!やっぱりモデルさん?!ケンちゃんの事務所関係のお方?!」


話を聞け、と言いたいところだけど百瀬くんの事を何と説明すればいいのか難しい。

ムギュムギュと胸の柔らかな感覚が分かるほどに密着、頬をツンツン突っついてくる尾崎は至極面倒臭くて。

一旦離そうとすれば、その前に彼女から離れる。覗き込まれたキラッキラ眩い瞳に、嫌な予感がした。


「ちゃーんと秘密にしますね!取り敢えず彼氏さんにご挨拶を〜〜」

「いや、尾崎、」

「こんにちはあ〜!澄香先輩にはいつもお世話になってますう〜」