焦がれる吐息





息ぐるしい密室から解放されるように降り立ったその階は、飲食店が連なるフードエリアだった。


此処へ向かう途中、二人とも昼食がまだだったことが分かってまずは一緒にご飯を食べる事になってしまったのだ。

「食べてないんですか?」と少し驚いた私に対して、百瀬くんは「心配でそれどころじゃなかったんで」とサラリと一言。

表情ひとつ変えず当たり前のように告げたその横顔が、正直、なんだか異様にかっこよく見えてしまって。そのとき慌てて顔を逸らしてしまった。


「何系がいいですか?」

「…………」

「澄香さん?」

「え、あ、どうしましょうか」


百瀬くんのせいで何も喉を通りません、なんて言えないから無駄にフロアガイドを凝視して鼓動を落ち着かせる。

お気に入りのパスタのお店、いつもだったら飛びつく中華、ハワイアン料理も好きだけど………。

チラリと横を盗みみれば、同じようにフロアガイドを見つめる美しい横顔が直ぐそこで。

緊張しすぎて汗かく手のひらを、ぎゅうと握りしめた。

歩くだけでも精一杯なのに、いま自分のレベルが全く追いついてない。男の子とご飯を食べるのなんて、中学の給食以来だ。

これがケンちゃんのいう荒療治なのか。

百瀬くんは、大丈夫なのだろうか……

もう一度、盗み見るように隣を見れば、ぱちっ!と目が合う。
 
    
「食べたいものないですか?」

「いや、そういうわけでは……」


まさか、こちらを見ていたなんて思わなかった。

ぶつかった青い瞳は、とても優しげで。その穏やかな眼差しに、どうしたって甘さしか感じられなくて胸がきゅうきゅうして仕方ない。


キャスケットの鍔をくいっと下げて、妙な照れを隠した。その時だった。


「あれ、スミせんぱいっ?!?」


突然、背後から大きな声を掛けられて肩が飛び跳ねる。弾かれるように振り向いた先、突進する勢いでバタバタバタ…!と、駆け寄ってくるその姿に思いっきり眉を顰める。