異彩を放つその人を瞳に、すぐさま心臓がきゅうっと反応する。
ふんわり煌めく金の髪。見覚えのある黒いマウンテンパーカーに、黒スキニー。片足をポールにかけ、軽く腰掛けた百瀬くんは両手をポッケに突っ込んで俯いている。
ただそこに彼が存在しているだけで、まるでモード誌の美しいワンショットのようだった。見慣れた平凡な街並みが、いつもと全然違う風景に見えてしまう。
数時間ぶりの恥ずかしさやら気まずさも相まって、なんだか緊張して表情筋がカチリと引き締まった。
そんな所で何をしているんだろう、
芽生えたばかりの疑問は、彼が振り向いたことによって何処かに飛ぶ。
閑静な住宅街の中で、浮世離れした青い瞳。
彼はその美しい瞳に私を映した瞬間、まるで安堵するかのように僅かに頬を綻ばせた。
いつの間にか立ち止まっていた私を見つめながら、ゆったりと腰をあげて。
そして、当たり前のように私のもとへと来るから胸がドキドキと轟く。こんなので買い物できるのかってくらいに、五月蝿く。
金の髪はもう寝癖はなく、パーマがかった髪はゆるふわっと綺麗にセットされていた。なんて、今はどうでもいい事を考えてみても気は紛れない。
「こんな所でどうしたんですか?」
胸の高鳴りを恍けるように首を傾げれば、一瞬、百瀬くんは困ったような顔をした。
「……分かりきったこと聞かないでください」
そう言ってポッケに両手を突っ込んで、マウンテンパーカーの襟元にくちびるを隠す。
「連絡先聞き忘れたの、ずっと後悔してました」
「え、」
「心配しました、かなり」
「……しんぱい?」
狼狽えているうちに、青い瞳がこちらを向く。彼は曖昧に微笑んで、首を傾げた。
「……もしかして、急いで来てくれました?」
「え、いや別に……」
「髪、乱れてますよ」
「っ、うそ」
一人混乱しながら、慌てて手櫛で髪を直す。すると視界の隅で、ポケットから筋張った手がゆったり出てくるのが見えた。
ほんのり、馴染みの煙草の香りが鼻腔を掠める。
「違います、」
静かな声と一緒に、ほっそりとした長い指がこちらに伸びてくる。それにピクリと身構えてしまった私に、彼の指先も一度止まる。
怖々と見上げてみれば、百瀬くんはただゆったりと柔く微笑んだ。
青い瞳には、確かな甘味を感じる。
酷く優しげな表情に目を奪われたときにはもう、嫋やかで優美な指先はそっと私の髪に触れた。
「こっち」
短い言葉さえも、柔く優しく聞こえて。
その優しさを受け入れるように、私は静かに睫毛を伏せた。



