焦がれる吐息




𓂃𓈒𓏸


…———ずんずん歩いていた足は、いつの間にか小走りになっていた。



「昼前には、帰ってくるので…」なんて伝えたくせに、もうとっくに昼下がり。幼児組とシールをペタペタ貼ったり、小学生組に巻き込まれてドッジボールなんてしていたら、どんどん時間が過ぎていた。

『少し遅くなります』って連絡しようと思っても、すぐに百瀬くんの連絡先を聞いてなかったことに気がついて肩を落とす。


……いや、でも遅くなったと言っても、まだ午後の光がぽかぽか照る時間帯。ただの買い物だし、百瀬くんも大してそんなに気にしてないか……

一人焦って全力ダッシュしている自分が急に恥ずかしくなって、マンションが見えてきた頃には速度を落とした。

呼吸を整えるのと一緒に、疲労の溜め息を吐く。

今日の作戦も失敗だった。いや、失敗どころじゃない。


『ねえスミちゃん、ケンジってひと、やっぱりへんだよ〜』

『え、どうして?』

『だっておんなじ形のばっかりぃ〜ほら!』


そう小さな唇を尖らせながら子供達が見せてきたのは、紛れもなく私が買ってきたシール達。でも本当に同じようなシールばかりで目をひん剥いた。


色やデザインは異なるけれど、いや、なぜ私はハートばかりを……??

百瀬くんのことをぼんやり考えながら、適当にホイホイ籠に入れていたらそんな始末。


「ケンちゃん、どうしちゃったんだろうね」なんて苦笑いを浮かべながら、小さな手のひらいっぱいにあるハートに頬が燃えたのは言うまでもなかった。


「プリンセスのシールがほしかったのに〜」と言うユイちゃんを宥めながら、みんなで自由帳をハートだらけにした。

次は、ちゃんとプリンセスのシールを買おう…ケンちゃんごめん……と肩を窄めたところ。


マンションの手前、ガードパイプに寄り掛かるようにして立つ人影が見えた。