焦がれる吐息





「って、いってたの!ひみつだよ?」と。

離れたケイトは、私の顔を覗き込んでにっこりと目尻を下げた。それにすぐさま胸は、きゅんっとトキメキの音を奏でる。

どうしてかは、分からない。

理解は追いついてないのに、心臓が激しく鼓動し始める。

ケイトが可愛いからだけじゃない。

本能が、未知なるトキメキを察知していた。



「…えっと…しーちゃんって男、なんだ?」

「うん!すっっっごく綺麗なお兄ちゃんなんだよ!」

「…そっか」


凄く、綺麗なお兄さん……何となく、この場に無関係な百瀬くんが浮かんでしまって、勝手に恥ずかしくなって頸をそわそわ掻いた。

ケイトはまた私の隣にちょこんと腰掛ける。当たり前のように、トンッと小さな頭が寄りかかってきて。小さな重みは、無意識に背筋をしゃんとさせた。


「しーちゃんね、いつもつまんない顔してたの」


薄汚れた運動靴の爪先を雑草にちょんちょん当てながら、ぽつりと呟いたケイト。脈絡もなくマイペースに話を始めるのはもう慣れっこだから、静かに耳を傾ける。


「でもね、スキな人のはなしをしてくれたとき、すごくきらきらしてたんだよ?」


「だからね」そう言って私の方を見上げたケイトの瞳にはもう、涙はみえない。眩い光が差す、まっすぐな澄んだ瞳。

その美しい瞳に、色も何も似ても似つかないのに、やっぱり百瀬くんを思い出してしまう。


「いっぱいおうえんするんだ、ぼく。」

「……そっか。えらいじゃん、ケイト」


わしゃわしゃ繊細な髪を撫でるように乱してやれば、ケイトは、ふにっと上がった口角を抱え込む膝に隠した。最近知り得た、ケイトの照れ隠しだ。



———しーちゃん、どんな人なんだろう。


何となく、また園庭の向こう側、施設の一角へと視線がゆく。

お天気良い今日、どこもかしこも光が降り注ぎ明るいのに、そこだけは隣接する建物のせいで大きな影が覆いかぶさっていた。とても日当たりが悪そうだ。

遠くからその部屋の出窓を見つめて、何故か自分の心に息詰まるような切なさを感じた。



「ねえ、スミちゃん」



ぼうっとしていれば、ケイトに腕を引っ張られる。見下ろした先で、きゅるんっとした、ずるい瞳とぶつかった。



「ぼくも、かっこいいおとこになったら、スミちゃんにこくはくしていい?」

「…え、告白?私に?」

「うん!せかいで2番にかっこよくなったら、スミちゃんにすきっていう〜!」

「…ふふ、…そこ、2番目なんだ」

「うん、だって1番はしーちゃんだから!!」


ググッと力を込めるようにまた拳を握りしめるケイトは、やっぱりどうしたってかわいいけど。


「そのままでいいよ。もうかっこいいじゃん」


片頬をニッと持ち上げてそう言えば「〜〜っスミちゃん…!だいすきっ!!」と小さな身体でタックルされて思わず吹き出した。


世界で二番目にかっこいい(?)人の告白がこんなにも可愛くて熱烈なら、一番にかっこいい人の告白はどんなものなのだろうか。

分かりっこないことを考えながら、ぎゅうぎゅうと、小さな温もりを感じていた。